資金調達情報 2018.8.29
本日の調達情報は3件です。
1、Embodyが資金調達
バージニア州ノルフォークを拠点とするEmbody社が資金調達を実施しました。
金額は不明で、リードは 757 Angelsで、 CIT GAP Funds や個人投資家も参加しています。前のラウンドでは、 Defense Advanced Research Projects Agency (DARPA)から$12Mを調達したこともあります。
Embody社は、コラーゲンを素材としたインプラント治療デバイスを開発していて、腱や靭帯の治療を標的としています。当社のデバイスを使用することで、細胞の強固な再生が促されるため、通常よりも早く回復することがメリットのようです。
そのミソは、マイクロ流体工学と電解紡糸のようですが、一体どのような構造になっているのでしょうか。非常に興味があります。
昨日紹介したベンチャーもそうですが、独自構造、独自素材を使用したインプラント技術の発展が堅調です。日本は素材研究も盛んなので、素材✖️医療機器の分野で新しいベンチャーの可能性はありそうですね。
2、Outset MedicalがシリーズDで$132Mを調達
Outset Medical社が、シリーズDで$132Mを調達しました。今回のリードはアブダビを拠点とするMubadala Investment Companyで、既存投資家であるBaxter Ventures, Fidelity Management and Research Company, Partner Fund Management LP, Perceptive Advisors, Warburg Pincusも参加しています。2017年にもシリーズCで$76Mを集めており、今まで通算で$370Mを集めています。
当社は、透析の新しい技術としてTablo Hemodialysis Systemを開発しており、慢性腎疾患を対象にFDAの承認も受けております。Tabloは水道水で透析を行うことができるので、透析溶液を事前に作る必要がなく、患者に使いやすい仕様となっています。
またワイヤレスでデータを蓄積できており、患者自身でも操作しやすいインターフェイスになっているようです。
もっと小型化できて、家でできるようになれば本当の意味で患者フレンドリーなデバイスになりそうですね。
3、KaNDy Thera.がシリーズCで£25Mw調達
英国に本拠地を持つKaNDy Thera.がシリーズCで£25Mを調達しました。
Longitude Capital, Advent Life Sciences, Fountain Healthcare Partners, Forbion Capital Partners, OrbiMedなどからの調達です。
当社は、女性ホルモンの減少によって発症する慢性的な体調不良を治療する経口薬剤NT-814を開発中です。NT−814は足元ではPhase2bまで進捗しており、今回はその費用とのことです。Phase2aでは、閉経によって見られるほてりや、夜目がさめる事象が緩和されたとのことです。
HPを見る限り、セカンドパイプラインの明記がありませんが、この化合物一本で勝負していくのでしょうか。
本日は以上です
資金調達情報、業務提携情報 2018.8.28
本日の資金調達情報は2件、業務提携情報は1件です。
今後は、ベンチャーの目に付いた業務提携情報に関しても掲載したいと思います。
1、Nanovisが$5.5Mを調達
インディアナ州カーメルを本拠地とするNanovisが$5.5Mを調達しました。2015年の2.5Mに続く大きな資金調達です。
今回のラウンドは、Commenda Securitiesがリードで、他にも Elevate Ventures, 1st Source Capital Corporation, Purdue’s Foundry Investment Fund, Commenda Capital, and Ellipsis Venturesが参加しています。
Nanovis社は、ナノテクノロジーを用いた脊柱用インプラントを開発している医療機器ベンチャーです。脊椎用インプラントは、脊椎狭窄症の治療機器として期待されています。脊椎の骨の間に挿入し、神経の通り道である脊柱菅を広げることで、骨による神経刺激を和らげることが期待されています。
Nanovisのデバイスは、多孔質性の材料でチタン製の足場を接続し、しっかりと固定できることがメリットとなります。表面に細かな穴が、治療が促進されるとのことです。
そのあたりの細かなメカニズムは不明ですが、神経が通りやすくなるのでしょうか??
個人にあったものを如何に作ることができるかがポイントかと思います。
2、Beacticaが調達
スエーデンのウプサラを拠点とする抗がん剤開発ベンチャーのBeacticaが調達を完了しました。残念ながら、調達金額は不明です。今回のリードははっきりしませんが、既存のUNIONEN、ALMI Investも参加しています。
最初のVCラウンドも2014年にALMIが出資をしています。
Beacticaは、分子相互作用の解析技術を有していてLSD1、USP7を標的とした治療薬を開発していますが、今回の資金はLSD1のディスカバリー、in vivo試験費用として使用されます。LSD1はアロステリック阻害剤のようで、現在オプティマイゼーション、セカンドパイプラインのUSP7はリード化合物の探索中です。
また当社は、サノフィとの共同研究契約を締結していて、インスリンとインスリン受容体の相互作用を解析しているようです。
外資目がファーマも認めるその技術力に今後も注目ですね。
3、AffimedがGenentechとの提携を発表
ドイツ、ハイデルベルグを拠点とし、NASDAQに上場しているAffimedがGenentechとの共同開発契約を締結しました。金額は、アップフロントで$96M、総額$5Bです。
Affimedは、Redirected Optimized Cell Killing (ROCK®) という技術を持っていて、NK細胞、T細胞の両方を認識する抗体を作製しています。
バイスペシフィック抗体✖️ガン免疫という最近のトレンドの掛け算!!
これはかなり面白い技術ですね!
ちなみに、AffimedはCD16A、CD3抗体のPhase1臨床試験を実施しております。
こういった尖った技術、複数分野の掛け合わせは相当思っています。日本でもぜひこういう技術を見出していきたいですね。
本日は以上です。
NASDAQ IPO情報 Y-mAbs Therapeutics
Y-mAbs TherapeuticsがNASDQ市場に上場することが決定しました。
Y-mAbs Therapeuticsについて、全然知らなかったのでどういった会社か調べてみました。
2014年にThomas Gadによって設立されたY−mAbsは、その名の通りガンを標的とした抗体を作製しています。メインパイプラインは、naxitamabとomburtamabです。
naxitamabは、GD2を標的としたモノクローナル抗体で、小児癌である神経芽細胞腫を標的としています。現在Phase2を実施中ですが、本薬剤のメリットとして投与時間の短さがあります。他のGD2抗体は投与に10時間以上、その後数日入院する必要がありましたが、当薬剤は30分で投与可能ということで患者のQOLは大幅に改善されます。GD2ポジティブの患者は20万人と推定されており、大きな市場が見込めます。
omburtamabは 、免疫チェックポイントに機能を有するB7-H3を標的としたモノクローナル抗体で、小児癌の一種である軟膜髄膜転移ガンの治療薬として開発されています。こちらもPhase2の臨床試験を現在実施中です。
VCではHBM Healthcare Investmentsが8.85%、Sofinnova Venture Partners X, L.Pが5.1%の株を所有しており、今回のIPOで$92Mを調達するようです。
パイプラインも2つPhase2に入っていますし、そのバックアップ抗体も用意されていること、さらにはバイスペシフィック抗体も候補化合物として所有していることから非常に期待の持てるのではないでしょうか。
個人的には株をぜひ買ってみたいスタートアップですね。
資金調達情報 2018.8.27
本日の資金調達情報は一件です。
1、Harbour BioMedが$85Mを調達
中国・上海をベースとする中国系バイオテック企業であるHarbour BioMedがシリーズBで$85Mを調達しました。今回は、シンガポールのファンドであるGIC Private Limitedがリードです。
Harbour BioMedは、PDL-1阻害剤とHer2-CD3バイスペシフィック抗体を開発していますが、その設立経緯が大変面白いです。当社は、サノフィのエグゼクティブであったHarbour社現CEOであるJingsong Wang氏が、中国の有力VCのバックアップを得て設立したバイオベンチャーです。出資金($50M)で、オランダをベースとするHarbour antibodyを買収し、今の基盤を作りました。その後も、Kelun Biotechの有するPDL-1阻害剤の中国以外でのライセンスを総額$350Mで導入するなど、ライセンス活動で大きくなってきた企業です。まさに金の力で大きくなったお言えるのではないでしょうか。
今風な製薬企業ですね。
PDL−1阻害剤は、中国でPhase2が実施されており、これが他の国で臨床が進めば、当社のバリューは急激に向上するでしょう。
最近は、バイオ関連企業でも中国の躍進がすごいですね。
日本はファイナンス規模でも本当に置いてけぼりですね。ここまで巨額なフィアナンスを実施で切るバイオベンチャーは日本では皆無でしょう。
今後は中国系バイオベンチャーも注目ですね。
Yコンビネーター2018 summer Demo 2nd Day採択企業59社のうちバイオ関連企業は何社あるの?
以前の記事で、YC 2018 Summer 1st Dayで発表を行った63社のうち、広義のバイオ・ヘルスケア企業が23社あることを紹介しました。
翌日8/22に開催されたDemo 2nd Dayにも59社が登壇しており、そのうちバイオ・ヘルスケア関連企業が何社あるのでしょうか?
↓59社の一覧は以下を参照ください。
広義のバイオ・ヘルスケア企業を数えたところ、59社のうち17社が該当しました。今回は研究室管理、モニタリング企業や、医療サービス関連企業が多いですね。約28.8%になります。
ちなみに1st dayと合わせると、合計122社のうち、40社がバイオ・ヘルスケアに相当し、32.7%に相当します。全体の約1/3に当たるので、かなりの数を占めていることがご理解頂けるかと思います。
それだけ、ヘルスケア領域での課題が多いということと、それが最近の技術革新で解決できる可能性が出てきたことの表れでしょう。
これらの会社についても今後個別紹介していきたいと思います。
YC 2018 Summer Demo 1st Day 採択企業紹介−1
先日Demo Dayが開催されたYC 2018 Summer。
先の記事でも紹介しましたが、63企業のうち広義のバイオ・ヘルスケア関連企業は、23社ありました。その割合は、なんと36.5%。
目立ったのは食品関連企業で、フードテックの繁榮が見て取れますね。
その23社のうち、今日は創薬、医療機器、検査システム関連企業を紹介してみたいと思います。
1、Higia
Higiaは、EVAと呼ばれるウェアラバウルデバイスを作製しており、それで女性の乳がんをスキャンしようとしています。デバイスをつけることで、温度を検知してガンの有無をスキャンするようです。臨床試験をスタンフォードで2018年10月から実施予定の模様です。
ウェアラブルデバイスは、装着のここち、感度、精度が重要かと思いますので、そこらへんが要チェックですね。
↓デバイスの写真。本当にブラジャー様の構造です。
デバイスの形は、違いますが日本でもLily MedTech社が乳ガン様検知装置を作製していますが、こちらは超音波を使っているのとウェアラブルではありません。
上記課題が解決されるのであれば、ウェアラブルの方がいいかもしれませんね。
2、HepaTX
HepaTXは、スタンフォード発の技術を用いた肝炎治療薬を開発する創薬ベンチャーです。患者から単離した脂肪細胞から肝細胞を再生することで治療効果を期待するとのことです。ファウンダーは、Eric SchuurでUCLA, Stanford, Scripps Research Instituteで研究者として、Calydon, Inc., Asthmatxといったスタートアップではクリニカルマネージャーを経験しており、UCLAでPhDを取得しています。
技術の詳細は不明ですが、脂肪細胞はガン化もしにくいし、単離方法も確立されているので期待できるのではないでしょうか。
3、Allotrope Medical
Allotrop Medicalは、医療機器を開発しているベンチャーで、電気刺激で平滑筋を刺激することで、尿管の位置を探し出す機器を開発しています。
全米で、腹部への外科手術は年間に300万件実施されており、尿管を傷つけてしまうことで$3.2Bの損害があるとのことで、それを回避するためのデバイスとのことです。
今FDAと上市の相談中で、来年度にも発売を予定しています。
また当社は、カプセル型のデバイスも開発しています。これは手術後の便秘を克服することで入院日数を減らすことを目的としている様です。
↓カプセル型のデバイス
4、DemonPore
Demonporeは体内の様々な分子、DNA、タンパク質などを測定するナノ分子を開発しています。ここはHPもほとんどなくって、正直実態がよく掴めないのが悔しいところです。DNAの修飾や、Mutationが検知できるのであれば、創薬、検査などに幅広く使えそうな気がしますが、検知する内容ごとにナノ分子を作って、承認を取らないといけないのであればかなり大変そう。
5、Data Driven Biosciences
Date Driven Biosciencesは、遺伝子診断技術を有しており、従来の10倍の速度、10倍の安さで検査結果を出せるサービスを提供しています。
検査機器はすでに各病院にあるものを使い、自社で作製した解析ソフトをクラウドで提供する様です。Saasでマネタイズできるのは非常に面白いですね。
資金調達情報 2018.8.24-25
1日空いてしまいましたが、この二日間での資金調達関連情報です。
週末ということもあるのかかなり多くの会社のアナウンスがありました。
1、楽天アスピリアンがシリーズCで$150Mを調達
楽天アスピリアン社がシリーズCで$150Mを調達しました。なんと出資者は、楽天三木谷会長個人!!すげー額です、個人でとは思えません。
アスピリアンは、2011年にNIH小林氏が確立した近赤外線を用いた光免疫療法を開発しており、2017年11月に最初の出資をしています。これは近赤外線に反応する物質を抗体につけて、ガンに集積したところを赤外線を当てて攻撃する治療方法です。特異性があること、赤外線も内視鏡で当てることができるようで浸潤性も低い点で非常に興味深いですね。一番進んでいるASP−1929は、Phase3を頭と首のガンで実施予定ということで期待大ですね。
楽天は、バイオヘルスケア関連への投資をかなり積極的に実施していますね。以前にも、最近まーくんのCMで有名なGeneLifeを提供するジェネシスヘルスケアに14億円投資しています。
楽天はECで個人情報を持っているので、それと遺伝子情報、医療情報を紐づけることができればいろいろ面白いことができそうですね。
2、Paladina Healthが$165M調達
デンバーを拠点とするPaladina Healthが総額$165Mを調達しました。今回のリードは New Enterprise Associates (NEA)で、 Oak HC/FT, Alta Partners, Greenspring Associatesなども参画しています。
当社は、プライマリケアのプラットフォームを提供しています。ユーザー側は、24時間365日電話等で医師に症状を相談でき、医師に専門的な相談をすることができます。
皆保険制度ではなくて、医師への受診に高額な費用が必要なアメリカならではのサービスのような気がします。日本でも似たようなサービスはありますが、日本では気軽に受診するのでマネタイズが難しい印象があります。
当社は、全米に50箇所の拠点があるようです。NEAが出資しているので今後注目ですね。
3、Simple Feastが$12Mを調達
デンマークのコペンハーゲンを拠点とするフードスタートアップのSimple Feastが$12Mを調達しました。リードはBalderton Capitalで、Sweet Capital、ByFoundersを参加しています。
当社は、野菜を中心としたほぼ出来上がった食事を家まで配達してくれるサービスを提供しています。オーガニックにこだわっており、調理は10分以内で済むようです。
日本にも似たようなを生協、オイシックスなどでやっていますが、オーガニックへのこだわりが差別化ポイントなのでしょうか?いまひとつ良さがよくわかりませんね。
4、ApoGen Biotechnologiesが$4Mを調達
シアトルを拠点とするApoGen BiotechnologiesがシリーズAで$4Mを調達しました。リードはM Venturesです。前回のファイナンスはAbbVie Ventures, Alexandria Venture Investments, ARCH Venture Partners, Eli Lilly and Company, Johnson & Johnson Innovation Capital, WuXi AppTec’s Corporate Venture Fundが参加しており、今回のファイナンスで総額$11Mを調達したことになります。
↓ 当社のプレスリリースPDFです
http://apogenbiotech.com/wp-content/uploads/2018/08/ApoGen-Financing-Press-Release.pdf
当社はAPOBEC3B(A3B)を標的とした治療薬を開発している。A3Bはシトシンの脱アセチル化酵素で、がん細胞におけるDNA mutationに重要な役割を果たしている。ガン細胞では、DNA mutationによって抗がん剤に対する耐性ができており、それを克服することを目的とした薬剤のようです。調べましたが、化合物なのか抗体なのかはわかりませんでした。しかし、名だたる企業が出資しており、かなり期待されていることが伺えます。今後要チェックですね。
今日は以上です。