YC 2018 Summer Demo Day 採択企業紹介−3(食品-1)
以前の記事で、YC 2018 Summer Demo Day採択企業のうち、約32%がバイオ・ヘルスケアベンチャーであることをお伝えしました。
またその中で創薬、医療機器、解析技術に関するスタートアップを紹介しました。
今回は食品に関するベンチャーについて紹介したいと思います。
食品に関するベンチャーは、計11社あるので、今回はまず下記の6社紹介します。
・Cambridge Glycoscience
・Cytera CellWorks
・Buttermilk
・Spero Foods
・Four Growers
・Mac’d
1、Cambridge Glycoscience
Cambridge Glycoscienceは次世代の砂糖の代替品を作り出すベンチャーです。
既に多くの人工甘味料が開発されていますが、それらと比べカロリー、コストで、植物を由来とした甘味料を作成します。
既に数社のメーカーとの提携の話が進んでいるようです。
2、Cytera CellWorks
Cytera CellWorksは、イギリスの二人の大学生によって設立されたベンチャーで、細胞からの肉生成を自動で行うメカニズムの開発を行っています。
製薬メーカーが導入しているようなクリーンベンチなどを導入し、プレート上で七面鳥肉を作製することに既に成功しているようです。
3、Buttermilk
Buttermilkは、お湯ですぐに作ることができるインド料理のパックを作製するベンチャーです。サブスクリプションモデルで毎月届けてくれます。
あまりテクノロジードリブンではない気がするので、どこがYCに刺さっているのか疑問ですね。。
4、Spero Foods
Spero Foodsは、動物性蛋白質を植物を原料として代替しようとしているベンチャーです。独自のバイオテックと、ソフトウェアを用いることで、食感、味などを落とさずに代替することを検討しています。
5、Four Growers
Four Growersは、農業用ロボットを作製している会社です。
グレープやトマトの収穫には既に成功しており、将来的には四人分の代替ができるようなロボットになるということです。
6、Mac’d
Mac’dは、マカロニアンドチーズというアメリカの家庭料理を自分なりにカスタマイズし、提供できるサービスを提供します。
日本ではあまりポピュラーではないのですが、蕎麦とか日本独自の食べ物に応用できそうですね。
今回は以上です。
資金調達情報 2018.9.11-2018.9.17
先週の資金調達情報です。
先週も多くのバイオ・ヘルスケアベンチャーが資金を調達しました。
・キノファーマが10億円調達
・アトレカがシリーズCで$125Mを調達
・EndotronixがシリーズDで$45Mを調達
・OneOncologyが資金調達
・Prokaryoticsが$2.3Mを調達
・Epic SciencesがシリーズEで$52Mを調達
・ExoCoBioがシリーズBで$26.5Mを調達
・Arecor が£6Mを調達
・OncoResponseがシリーズBで$40Mを調達
・Clarify Health Solutionsが$57Mを調達
この中から私が注目したベンチャーについて取り上げたいと思います。
1、キノファーマが10億円を調達
日本の創薬ベンチャーであるキノファーマが10億円を調達しました。
全額を日本成長投資アライアンス株式会社が引き受けけています。
https:https://www.jgia.co.jp/news/2018/09/post_1095
キノファーマは設立が2005年と古株のベンチャーで、京都大学の萩原先生技術を元に、キナーゼに対する低分子創薬を行っています。現在、人パピローマウイルスに対する医師t主導治験を実施しています。
加えて、ダウン症、アルツハイマー病治療薬としてDYRK1Aに対する低分子創薬も行っています。
過去の出資では、2016年にNVCC、京大iCap、三井住友海上キャピタルが出資しています。また社長にウォーターベイン黒石氏、取締役にMUCAP島崎氏が入っているので、この2社も出資しているのでしょう。この辺りは、過去の謄本から資本政策を覗いてみたいところですね。
2、アトレカがシリーズCで$125Mを調達
カリフォルルニア州レッドウッドを拠点とするアトレカがシリーズCで$125Mを調達しました。本ラウンドには、Wellington Management Company, and Cormorant Asset Management, and new investors Aisling Capital, Boxer Capital of the Tavistock Group, EcoR1 Capital, Redmile Group, Samsara BioCapitalなどが参加しています。
アトレカは、B細胞、T細胞の受容体や抗体の構造を網羅的に解析することで、新規の創薬ターゲットやバイオマーカーなどを見出すレパトア解析技術を持つベンチャーです。以前から、GSK、ファイザー、サノフィなどのメガファーマと共同研究を続けており、今まで総額$91Mを集めています。
また近年では自社創薬も進めており、一番進捗しているパイプラインはATRC-101で固形ガンでの研究を行っています、今回の資金は、このパイプラインの臨床開発費用でしょう。
3、EndotronixがシリーズDで$45Mを調達
イリノイ州ライルを拠点とするEndotronixがシリーズDで$54Mを調達しました。
本ラウンドには、LSP Health Economics Fund 2, Aperture Venture Partners, BioVentures Investors, Lumira Ventures, OSF Ventures, Seroba Life Sciences, SV Health Investors, Wanxiang Healthcare Investmentsが参加しています。
当社は、Cordella™ Heart Failure SystemとCordella™ Pulmonary Artery Sensor を提供するデジタルヘルス企業です。心不全の状態を測定し、治療する機器を作成しています。
今回は以上です
YC 2018 Summer Demo Day 採択企業紹介−2(創薬、医療機器)
以前、YCの2018 Summer Demo Day採択企業に、バイオ・ヘルスケア企業が非常に多いことをお伝えしました。
私の勝手な計算では、計122社のうち、40社がバイオ・ヘルスケア関連企業で、その割合は約32%でした。非常に多い印象です。
また、別の記事では、創薬、医療機器、検査システム会社を5社ほど紹介しました。
今回は、前回紹介しきれていなかった創薬、医療機器関連の採択企業を6社紹介したいと思います。
・64-X
〇64-X
ワイズ大学のポスドクであるAlexis Rovnerが設立した64-X社は、ゲノム工学を用いてE.coliなどの生物に通常ではアクセスできないような環境で、機能を果たすように変化させる技術を持っているバイオテック系の会社です。
これだと意味がよくわかりませんが、通常では生きていけないような環境でも生物が何かを生産したり、分解することができれば、環境、食品、医療に応用することが出来ると思われます。HPにはHigh throughtput bio engineeringと書かれているので、どういった技術か興味ありますね。
〇CB Thera.
CB Thera.はカンナビノイドと呼ばれる大麻に多く含まれる物質を化学合成で作製することを目指している創薬ベンチャーです。
カンナビノイドは、痛み止め、てんかん治療薬などとして使われてきた歴史があるが、植物から抽出するよりも低価格で、迅速に合成する手法を開発しているとのことです。
但し、カンノビノイドは臨床試験において自殺を促す効果が確認されており、開発のハードルは高いのではないかと思います。
〇Scanwell Health
Scanwell Healthは尿検査を簡易的に行うキットの開発を行っています。
ユーザーがキットを購入すると、検査用紙が入っていて、そこに自分の尿をかけ、スマートフォンで写真をとれば検査結果を見ることが出来ます。
アプリは既にFDAから承認されています。結果からは尿道感染しているかどうかを検知できます。
1キットが$5で、医師にコンサルテーションを頼むと$25かかるようです。簡易検査がこのコストでできるのであれば安い気がしますね。
〇Reformer Thera.
Reformer Thera.は抗がん剤の開発を行っている創薬ベンチャーです。一番進んでいるパイプラインはトリプルネガティブ乳がんを標的としており、現在Phase2を実施中です。がん免疫を小分子で狙っているようです。
設立が2018年で、ファイナンスしていないにも関わらず、既にPhase2を実施していますが、大学で進めてきたということなのでしょうか。
他のパイプラインも気になりますね。
〇SF17 Thera.
SF17 Thera.は、小児リウマチ患者の症状をモニタリングする管理プラットフォームを作製しています。またその管理プラットフォームでは新しい薬のターゲットをデモンストレーションできるようです。
管理データからでは、患者の特徴はわかりますが、新しい分子等は発見できないので、どうやって創薬に結び付けるかは正直謎ですね。
〇CureBase
CureBaseは、臨床試験をより迅速に、より安く実施できるソフトウェアを開発しています。患者リクルートの迅速化、提携業務の自動化、製薬会社の臨床試験をクリニックに周知する。以上のようなメリットがあるようで、CROのマーケットプレースを目指すようです。
今回紹介する中では当社が一番興味深いですね!創薬ベンチャーでもいつも躓くのは臨床試験です。ここを迅速化し、値段を下げられるのであれば非常にニーズが高い分野だと思います。
次回は、採択企業の中で最も多い食品スタートアップについて紹介したいと思います。
資金調達情報 2018.9.5-2018.9.10
今回から、調達情報は週一度にしようかと思います。
それ以外の時は、ファイナンス以外の情報について書いてみたいと思います。
今週もバイオ・ヘルスケアベンチャーの調達情報は多くありました。
目に付いたものをあげてみます。12件の資金調達情報がありました。
多いですね。。。日本だったら下手したら半期で10件ないかと思います。。。
・Scipher MedicinegがシリーズAで$10Mを調達
・4D Molecular TherapeuticsがシリーズBで$90Mを調達
・Mirrorが$25Mを調達
・Twentyeight-Seven TherapeuticsがシリーズAで$65Mを調達
・Notable HealthがシリーズAで$13.5Mを調達
・PhaseBio PharmaceuticalsがシリーズDで$34Mを調達
・Cricket HealthgがシリーズAで$24Mを調達
・Azeria TherapeuticsがシリーズAで£4Mを調達
・Alpha Tau Medicalが$29Mを調達
・Fulcrum TherapeuticsがシリーズBで$80Mを調達
この中から、著者が興味深いと思った会社を見ていきたいと思います。
1、 4D Molecular Thera.がシリーズBで$90Mを調達
カリフォルニアのエメリービルを拠点とする4D Molecular Thera.がシリーズBで$90Mを調達しました。今回のリードは、Viking Global Investorsで、ArrowMark Partners, Janus Henderson Investors, The Biotechnology Value Fund, MiraeAsset Financial Group, Pappas Capital & Chiesi Ventures, Pfizer Venturesなどが参画しています。
www.4dmoleculartherapeutics.com
4D Molecular Thera.は次世代のAAVを開発している遺伝子治療薬開発ベンチャーです。
1stパイプラインは、4D-110で先天性脈絡膜欠如 と呼ばれる希少疾患を標的としています。この疾患は網膜の編成によって発症し、悪化すると失明する疾患です。このプログラムは、2019年に臨床試験入りする予定となっています。
当社も大手製薬会社とのディールが進んでいます。
本年4月にはロシュと眼科領域での研究開発、7月にはアストラセネカとCOPDに関する研究開発のディールを締結しています。他にも心疾患、筋肉系の疾患にもパイプラインがありますが、いずれも希少疾患です。遺伝子治療はやはり希少疾患との相性が良いですね。
2、Fulcrum TherapeuticsがシリーズBで$80Mを調達
マサチューセッツ、ケンブリッジを拠点とするFulcrum Thera.がシリーズBで$80Mを調達しました。今回のリードは、Foresite Capitalで、 Fidelity Management and Research Company, 6 Dimensions Capital, Casdin Capital, Sanofi Venturesなどが参画しています。
Fulcrum Therapeuticsは、CRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集技術を所有しています。
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)を標的とした治療薬を開発しており、2019年にIND入りする予定となっています。DUX4遺伝子のD4Z4 repeatが短縮しているのを修正するというメカニズムです。
他にもDMD、Fragile X syndrome治療薬も開発しています。またアルファシヌクレインを標的としたパーキンソン病治療薬もパイプラインとして所有しています。
他の疾患でPOCが取れれば、パーキンソン治療薬のバリューが上がりそうですね。
3、Twentyeight-seven Thera.がシリーズAで$65Mを調達
マサチューセッツ、ケンブリッジを拠点とするTwentyeight-seven Thera.がシリーズAで$65Mを調達しました。今回のリードは、MPM CapitalとNovartis Venture Fund で、Johnson & Johnson Innovation, Vertex Ventures HC, Longwood Fund, Astellas Venture Managementが参画しています。アステラスのベンチャーキャピタルですね!
Twentyeight-seven Thera.はmicroRNAを標的とする創薬ベンチャーです。RNAを直接狙うのではなく、RNAの発現を制御しているタンパク質(RMPs)を標的とする小分子を開発するプラットフォームを所有しています。
1stパイプラインではLin28を標的としています。Lin28はガン原因因子であるLet-7の発現に関与しているRMPです。足元の開発状況は不明ですが、RMPを標的とする小分子化合物を開発するという発想は興味深いですね。
当社のファウンダーの一人に日本人女性のKazumi Shiosakiさんがいらっしいます。彼女は、2003年からMPMにジョインしていて、バイオベンチャーの設立を主な業務としているようです。アステラスが買収したMitbridgeも彼女がファウンダーのようです。
今回アステラスが入った理由もそこにあるかもしれませんね。
額も大きいし、今後も着目していきたいですね。
今回は以上です。
Delta Fly PharmaのIPOについて-1
本日2018年9月5日に、Delta Fly Pharmaのマザーズ市場への上場が承認されました!おめでとうございます!
バイオベンチャーの上場は、2017年3月のソレイジアファーマ以来でしょうか。日本の市場では本当に久々ですね。約1年半ぶりです。
Delta Fly Pharmaは、2010年に江島清 徳島大学客員教授によって設立されました。江島氏は元々大鵬製薬の研究センター長で、研究畑出身の方です。
〇パイプライン
デルタフライファーマは5つのパイプラインを所有しており、主にガンを標的疾患としています。
1stパイプラインは、AMLを標的としているDFP-10917です。デオキシシチジン誘導体で、細胞周期の調整が基本メカニズムです。現在、米国でPhase3、日本でPhase1を実施しています。日本のライセンスに関しては、2017年に新日本科学にライセンスアウトしています。
2ndパイプラインは、DFP-10917で、こちらは日本でPhase2試験を実施しており、協和化学工業にライセンスアウトしています。
3rdパイプラインのDFP-11207は、チミジル酸シンターゼ阻害剤で、固形がんを標的疾患として米国でPhase2を実施しています。
日本のバイオベンチャーでこれほど複数のパイプラインを並行して開発し、しかも米国でPhase3まで実施している会社は珍しいのではないでしょうか。
〇資本政策
有価証券報告書から資本政策を分析してみました。
A種優先株の詳細などは不明であるため、一部推察を含んでいることをご承知おきくださいませ。
これを見てみると、最終的なVC比率は約40%、事業会社比率は約30% となっています。バイオベンチャーらしい、外部株主が多い資本政策になっております。
シリーズC、Dは並行ラウンドになっています。開発面での進捗があまりなかったのかもしれませんね。この2つのラウンドではPre14億で、12億集めていますので、かなり切り出しをしている印象ですね。
最後のシリーズEは2018年3月に実行しています。かなりおいしい投資になる気がしますね笑
上場時バリュエーションですが、過去事例を見ていると150億~200億といったところでしょうか。そうすると、リードのNVCCの収益は20億円前後と想定されます。
Compsからの上場時バリエーションに関してはまた考察してみたいと思います。
ArvinasとSutro BioのIPOが決定しました
創薬ベンチャーのArvinasとSutro Bio.がIPOすることとなりました。
各々、$100M、$75Mを調達することとなります。
それでは各社について見てみましょう。
1、Arvinas
当社は、コネチカット州ニューヘイブンを拠点とする製薬企業です。
今まで3回のラウンドで、総計$111.6Mを調達しています。
↓ 各ラウンドの時期と調達金額
シリーズ | 調達時期 | 調達金額 | 出資者 |
シリーズA | 2013.9 | $15M | 5AM venture, Canaan partners, Connecticut Innovations |
シリーズB | 2015.10 | $42M | 既存投資家+New Leaf Venture Partners, OrbiMed, RA Capital Management |
シリーズC | 2018.4 | $55M | 既存投資家+Deerfield, Hillhouse Capital Group, Nextech Invest, Sirona Capital |
当社は、PROTACs (proteolysis targeting chimeras)を基盤技術とした創薬ベンチャーです。PROTACでは、標的タンパク質とユビキンチリガーゼを結合させるような化合物を見出すことができます。そうすることによって、疾患の原因因子を特異的に分解することが可能になります。
最も進捗しているパイプラインは、アンドロゲンレセプターARを標的とした去勢抵抗性前立腺癌治療薬ARV-110で、現在IND段階です。また次に進捗しているのが、エストロゲン受容体を標的とした転移性乳がん治療薬ARV-471で、こちらもIND段階です。
今回のIPO資金によって、これらの薬剤の臨床試験を実施することとなります。
2、Sutro BioPharma
当社は、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とする製薬企業です。
今まで、5回のファイナンスで$200Mを調達しています。
特に直前のシリーズEをわずか1ヶ月前に実行しています。
いったい倍率どのくらい撮れるのでしょうか笑
シリーズ | 調達時期 | 調達金額 | 出資者 |
シリーズA | 2006.1 | $1M | SV Health Investors |
シリーズB | 2007.12 | $36M | 既存投資家+Alta Partners |
シリーズC | 2010.11 | $53M | 既存投資家+Amgen Ventures、Lilly Ventures、 Skyline Ventures |
シリーズD | 2013.12 | $26M | 既存投資家+Celgene |
シリーズE | 2018.7 | $85.4M | 既存投資家+Vida Ventures、 Surveyor Capital、Tekla Capital Management、 Surveyor Capital、Samsara BioCapital、 Merck & Co., Inc.、Eventide |
当社は、ガンや自己免疫疾患を標的としたバイスペシフィック抗体、ADC、サイトカイン誘導体を開発しています。1st パイプラインであるSTRO-001はCD74抗体を用いたADCでミエローマを対象疾患として、Phase1試験が実施中です。
2ndパイプラインのSTRO-002は、FolRα抗体を用いたADCで、卵巣癌を対象疾患として現在IND入りしたタイミングです。
今回のIPO資金により、これらのパイプラインの開発を実施します。
当社も製薬会社との共同研究を積極的に実施していて、メルクとはサイトカイン誘導体、Celgeneとはガン免疫の研究を実施しています。
これらの提携費用により、足元の売り上げはしっかりしているのではないでしょうか。また技術も今注目の領域であるため、今後もバリューの向上が期待できるのではないでしょうか。
○まとめ
まだPhaseに入る前の段階でのIPOは日本ではありえないことです。日本とアメリカで大きな戦略の違いがあります。
海外のベンチャーの状況を見ていると出資金によって幅広くパイプラインを持つことが一つの価値になっているのか、当社も約10個のパイプラインを持っていて、広く浅く開発をしています。
一方日本では、調達額が低くIPOのハードルがPhase2に設定されている分、一個のパイプラインを深く開発します。まさに一点突破の開発で、多くてもパイプラインは3個でしょう。
IPOのしやすさ、資金提供者の多さが、影響していると考察します。
資金調達情報 2018.8.30-2018.9.4
沖縄に旅行に行っていたため、5日間更新ができませんでしたので、その間に発表された資金調達情報についておしらせします。
件数が結構多かったので、目立ったものをここではまとめたいと思います。
1、メトセラがシリーズAで5.2億円調達
日本のバイオ関連企業の調達情報がようやく届きました!
山形県鶴岡を拠点とする再生医療ベンチャーメトセラがシリーズAで5.2億円を調達しました。Beyound Next Ventures, Eight Roads, F-Prime Capital Partners、日本ライフライン株式会社、Sony Innovation Fund、第一生命保険株式会社、株式会社ケイエスピーが参加しています。日本のバイオベンチャーが集めるシリーズAでは平均的な金額といったところでしょうか。
メトセラは、VCFというVCAM−1を過剰発現させた線維芽細胞を心不全を対象に開発しております。今回の資金を持って、移植デバイスの開発、前臨床試験の実施、Phase1試験の準備を進めたいとのことです。
社長の野上さんは、研究バックグラウンドではなく、元銀行員で、Co-founderの岩宮さんの開発した技術に目をつけて当社を起業しました。そういう意味では、非常にバランスの取れたチーム構成ですね。
5.2億円の調達において、どのくらいのバリエーションなのかが気になるところです。
2、 JacobioがシリーズCで$55Mを調達
中国北京を拠点とするJacobioがシリーズCで$55Mを調達しました。今回のラウンドでは、Qiming Capital と Hillhouse Capitalが参加しています。
当社は、2015年に設立されたガン、自己免疫疾患、感染症を対象とした創薬企業で、足元では13個のパイプラインを有します。一番進んでいるのが固形ガンを標的としているJAB-3068で、現在米国でPhase1試験中です。
JAB-3068のメカニズムはわかりませんが、経口投与とのことなので恐らく低分子化合物でしょう。低分子で、固形ガン治療薬は最近少ないと思うので、ぜひ頑張って欲しいところです。
ちなみに2017年のシリーズBではLilly asia ventureが出資しています。
このファンドはLillyの子会社で、アジア、特に中国を中心に投資をしているようです。
残念ながらポートフォリオに日本はありません。日本にほこういった外資製薬会社のCVCが進出してくれれば、市場も活性化するのですが。。。。
3、Miracor MedicalがシリーズDで30Mユーロ調達
ベルギー、アワンを拠点とする創薬ベンチャーのMiracor Medicalが30Mユーロを調達しました。今回のリードは、中国を拠点とするMing Capital でした。
↑ Micacor社のプレスリリースです(PDF)
当社は、心疾患を治療するPISCO Impulse systemという医療機器を作製しています。
血流の流れを改善することで、急性心筋梗塞などを改善することができるという結果が既に臨床で得られています。
4、Evox Thera.がシリーズBで$45.4Mを調達
イギリス オックスフォードを拠点とするEvox Thera.がシリーズBで$45.4Mを調達しました。今回のリードは、Redmile Group で、GV (formerly Google Ventures), Cowen Healthcare Investments, Panacea Healthcare Venture, Borealis Ventures, Oxford Sciences Innovation (OSI), Oxford Universityが参加しました。
当社は、エキソソーム技術を用いたデリバリー技術を開発しており、標的の細胞に目的のタンパク質や核酸を導入することができます。
一番進んでいるパイプラインが、ニーマンピック病でPhase1を今後実施する予定です。他にも希少疾患を標的とする治療薬の開発を行っています。
タンパク質やベクターを入れることができるので、原因因子がはっきりとしている希少疾患を標的としているのでしょう。ベーリンガートの共同研究も実施しているようです。
エキソソームをツールとして使っているベンチャーは日本にはないと思うので、非常に興味はあるのですが、いかんせん創薬化が難しい。また中に入れるものが蛋白とかになるとコスト面でも課題がありますね。そういったとこをやるのがベンチャーなんですが、日本の環境ではハードルが高そうです。
今回は以上です。