ArvinasとSutro BioのIPOが決定しました
創薬ベンチャーのArvinasとSutro Bio.がIPOすることとなりました。
各々、$100M、$75Mを調達することとなります。
それでは各社について見てみましょう。
1、Arvinas
当社は、コネチカット州ニューヘイブンを拠点とする製薬企業です。
今まで3回のラウンドで、総計$111.6Mを調達しています。
↓ 各ラウンドの時期と調達金額
シリーズ | 調達時期 | 調達金額 | 出資者 |
シリーズA | 2013.9 | $15M | 5AM venture, Canaan partners, Connecticut Innovations |
シリーズB | 2015.10 | $42M | 既存投資家+New Leaf Venture Partners, OrbiMed, RA Capital Management |
シリーズC | 2018.4 | $55M | 既存投資家+Deerfield, Hillhouse Capital Group, Nextech Invest, Sirona Capital |
当社は、PROTACs (proteolysis targeting chimeras)を基盤技術とした創薬ベンチャーです。PROTACでは、標的タンパク質とユビキンチリガーゼを結合させるような化合物を見出すことができます。そうすることによって、疾患の原因因子を特異的に分解することが可能になります。
最も進捗しているパイプラインは、アンドロゲンレセプターARを標的とした去勢抵抗性前立腺癌治療薬ARV-110で、現在IND段階です。また次に進捗しているのが、エストロゲン受容体を標的とした転移性乳がん治療薬ARV-471で、こちらもIND段階です。
今回のIPO資金によって、これらの薬剤の臨床試験を実施することとなります。
2、Sutro BioPharma
当社は、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とする製薬企業です。
今まで、5回のファイナンスで$200Mを調達しています。
特に直前のシリーズEをわずか1ヶ月前に実行しています。
いったい倍率どのくらい撮れるのでしょうか笑
シリーズ | 調達時期 | 調達金額 | 出資者 |
シリーズA | 2006.1 | $1M | SV Health Investors |
シリーズB | 2007.12 | $36M | 既存投資家+Alta Partners |
シリーズC | 2010.11 | $53M | 既存投資家+Amgen Ventures、Lilly Ventures、 Skyline Ventures |
シリーズD | 2013.12 | $26M | 既存投資家+Celgene |
シリーズE | 2018.7 | $85.4M | 既存投資家+Vida Ventures、 Surveyor Capital、Tekla Capital Management、 Surveyor Capital、Samsara BioCapital、 Merck & Co., Inc.、Eventide |
当社は、ガンや自己免疫疾患を標的としたバイスペシフィック抗体、ADC、サイトカイン誘導体を開発しています。1st パイプラインであるSTRO-001はCD74抗体を用いたADCでミエローマを対象疾患として、Phase1試験が実施中です。
2ndパイプラインのSTRO-002は、FolRα抗体を用いたADCで、卵巣癌を対象疾患として現在IND入りしたタイミングです。
今回のIPO資金により、これらのパイプラインの開発を実施します。
当社も製薬会社との共同研究を積極的に実施していて、メルクとはサイトカイン誘導体、Celgeneとはガン免疫の研究を実施しています。
これらの提携費用により、足元の売り上げはしっかりしているのではないでしょうか。また技術も今注目の領域であるため、今後もバリューの向上が期待できるのではないでしょうか。
○まとめ
まだPhaseに入る前の段階でのIPOは日本ではありえないことです。日本とアメリカで大きな戦略の違いがあります。
海外のベンチャーの状況を見ていると出資金によって幅広くパイプラインを持つことが一つの価値になっているのか、当社も約10個のパイプラインを持っていて、広く浅く開発をしています。
一方日本では、調達額が低くIPOのハードルがPhase2に設定されている分、一個のパイプラインを深く開発します。まさに一点突破の開発で、多くてもパイプラインは3個でしょう。
IPOのしやすさ、資金提供者の多さが、影響していると考察します。